POWER OF FASHION × SHUN KOMIYAMA

伊勢丹新宿店で2020年7月29日(水)~2020年9月22日(火・祝)迄、ディスプレイデザインを担当しました”POWER OF FASHION”のウインドウを写真家 小見山俊さんに撮影していただきました。素晴らしい写真の数々から10枚をセレクトいたしましたので是非ご覧ください。

僕が藤田さんの作品に出会ったのは十九歳のころ。藤田さんの描いたCDジャケットに魅力され、アートワーク欲しさにCDを購入していた大学生でした。それから十数年経ち、今、偶然の出会いやミュージシャンとの関わりを通じて、こうして藤田さんの作品を自身のフィルターを通して記録できることを心から光栄に思います。伊勢丹が藤田さんの作品でドレスアップしてすぐ、その世界を体感しに行きました。そこには、「ショーウィンドウ」という名詞の枠を超えた、確かで力強いビジュアルが並んでいました。藤田さんの作品の特徴はその流動性にあると感じてきました。ペインティングでもデザインでも、確実に流れを感じさせられます。さらに今回は、LEDの映像も併せて、より明確に流動で伊勢丹が包み込まれていました。2020年は、価値観が大きく移り変わった一年になりました。なかでも、僕らが生業の土壌としているアートやファッションといった「新しい価値の創造」は、その必要性が根幹から大きく揺らいでしまいました。しかし、今回のISETAN POWER OF FASHIONは、その一つの出来事すら、大きな流れの中の他愛のない事象の一つだと覚えさせられる、そんなビジュアルでした。僕たちは、人間は、これまで常にコントロールできない大きな流れの中で営みを育んできました。明日の天気、他人の感情、世の中の情勢、地球の機嫌…そして、時間。コロナウイルスもそういった途方もない大きな流れの中の一つなのであれば、今までと同じようにこの流れの中を二本足でサヴァイヴし、前に歩んで進んで行けると思えるようになりました。そのようなことを感じながら、今企画の最終日に藤田さんと伊勢丹に赴き、撮影をしました。「記録写真でなく、作品として撮影してほしい」と依頼して頂き、写真という二次元の中に改めて藤田さんの作品の流動性をそっと真空パックするように、僕なりの保存形態を突き詰めました。藤田さん、素晴らしい今企画を、恐らく一生のなかでも繰り返し思い出すようなビジュアルを、写真に残す機会を頂きありがとうございます。また、あの喫茶店で、コーヒー片手に世間話に花を咲かせましょう。この大きな流れの中で。

小見山峻


小見山峻
写真家。神奈川県横浜市出身。2018年、JWアンダーソン主催の”YOUR PICTURE / OUR FUTURE”にて日本人で唯一ファイナリストに選出されるなど、海外からの注目も集める。2018年に写真集「hemoglobin」を出版。主な個展に同名の「hemoglobin」、「冴えない夜の処方箋」など。eyescreamにて、写真と詩の連載「popcorn-talkie」を掲載中。
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